窓Law家ドロップアウト 第一話~目覚め~

 カーテンの隙間から差し込む光によって俺は目を覚ます。眠っている間にベッドの横で充電しておいたスマートフォンで時間を確認すれば、時刻は正午をとうに過ぎているらしい。その流れで青い背景に白抜きの鳥が描かれたアイコンをタップする。Twitterである。今日もおれのバカバカしいフォロワーたちは、大学でぼっちだの陰キャだの、百田尚樹の日本国記がどうのこうのだの、ろくでもないことをいい加減にインターネットと言う名の電子の海に放出し続けている。どうでもいいことだが、このいい加減な書き込みたちは数十年後に平成の終わりという時代がいかなる時代であったかを知るための研究にビッグデータやらAIやら使って調べられるのだろうか。バカバカしい人間が大半の世の中を調べたところで碌でもない結果が出ることが請け合いだと思うのだが。まぁ、後の世をおれが夢想することなどそれこそ""どうでもいい""話なのだが。

 ふとスマートフォンが『ピコンッ』という間の抜けた音を出しながら一瞬震える。この通知音というやつは否応なしに、おれの精神を刺激し、背筋を少し震わせる。携帯電話の通知程度で揺らぐ自身の心の脆弱さに自身への情けなさが募る。通知の内容はメールの通知であった。おれは学内メールが自分の携帯のメールアドレスに転送するように設定している。そのメールの送り主は所詮おれの指導教官というやつだった。いまいち読む気にもならないが、どこかのメッセンジャーアプリのように読んだことが相手にも伝わるわけでもないのでまだ読む気がある内に読んでしまったほうがよい。

 内容といえば、研究室のミーティングを無断で欠席し、ここ数日全く研究室に姿を見せていないことを叱責しているとも、表面上は心配しているように見せたいようにも取れるような内容であった。おれは所詮工学部の4年生というやつなので研究室に毎日"出勤"し、研究成果というやつをどうにかひねり出さなければならないのだが、どうもそれがおれには難しいらしい。今日とて、起床時間はすでに太陽は真南をとうに通り過ぎた時間であり、覚醒している時間も、覚醒しているという表現が不適当に思えるほど脳も身体も思うように働かない。どうにかまともな時間に就寝しようと布団に入るも、結局眠ることは叶わず、アルコールをかっ喰らってどうにか就寝する。そのような生活サイクルでは研究室に行くなど到底不可能であることは自明である。事実、指導教官はおれが来ていないのをここ数日だと思っているようだが、もう2週間は研究室に顔をだしていない。

 おれがこのような人間になったのは大学に入学してからだが、根本的な原因はもっと前にある気がする。そのことを考えて、研究室に出勤しなければならないという心の中の罪悪感を追い出そう───。

 

 

次回、窓Law家ドロップアウト 第二話~中学編~


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